地獄少女 #21 優しい隣人

ネタバレあり、ちょっとした論評あり、長文あり。
巡回の方はスルーしたほうが時間短縮になるよw。
見てないと分からないしね。


さぁアニメ感想にしては長いだろ!しかも読みにくい!引き返すなら今のうちw。携帯の方はご愁傷様w。





このアニメはなにかアニメを越えた課題を見てる人に投げかけている、のはわかってたけど、今回の話はそれを明確にしてくれた。


初めて「糸を引かない」=復讐をしない、という結論を依頼者が下したわけだけど、それが正しいことだったのか、間違ったことだったのかは、ケースバイケース。それを明確に示したのが今回。

今回は柴田親子の説得のため、依頼者が糸を引かなかったわけだけど、そのため、現在の死んだ(実質殺された)父親との家を立ち退かされ、孤児院へ。家と莫大な耕地は(実質依頼者の父を殺した)ターゲットへ譲渡された。そして孤児院で依頼者が見たのはパソコン。最後のシーンで、依頼者の後ろに立つ地獄少女の一言はまさにこのアニメが伝えたいことだと思う。「(糸を引くか引かないか)それはあなたが決めることよ」


糸を引けばターゲットは地獄へ流される(死ぬ)わけだけど、自分も死後は地獄へ行く。柴田親子(父一(はじめ)と娘つぐみ)の意見は異なっている。一は地獄送りは殺人であり、どんな理由があっても人を死なせることは間違ってるという見解だけど、つぐみは流される人は悪い人だから、復讐を悪いことだとは思わないっていう見解。どちらが正しいっていうのがないのは明確だけど、視聴者もどっち側かの意見を持ってると思う。それは現代社会における、「殺人はどんな理由があっても許されない」という共通概念がありながら、当人にしかわからない憎しみ、怒り、復讐心、その感情を防衛機制における「抑圧」「合理化」「昇華」でききれない感情を向ける先、それがこのアニメにおける「地獄少女」という存在へすがることでその感情を晴らそうとしている依頼者たち。一は一般社会の共通概念を代表していて、地獄少女とつぐみは個人の晴らせない感情を代表している、この二項存在が対立して進められるのがこのアニメの構造なんだと思った。


まぁ見ている人ならだいたい分かってることだろうけどw。
一が真面目な社会規範に見えるけど、次週予告を見る限り、過去になにかあったみたいで、そのあたりは流動的になるかもしれません。



閑話休題


今回の話においては、糸を引かない結論が描かれたわけだけど、その決断の結果、依頼者は孤児院行き、父との家は他人、しかも父を実質殺した奴の手の元へ。もし、藁人形を渡されてすぐ引いてたら家は守れたはず。この決断が、「正しい」と判断できるのかは各個人によるけど、引いてたらその数日数年は、引かないよりは幸せだったんだろうなぁ。



今までの話だと、糸を引く=その数年は幸せになれるっていうのは通説だった感はある。

#01「夕闇の彼方より(いじめ)」#06「昼下がりの窓(社宅での嫌がらせ)」#09「甘い罠(悪説を広められたケーキ屋)」#16「旅芸人の夜(実の姉によるいじめ)」なんかはターゲットが消えることによって依頼者の立場は急激に好転したから幸せな、または普通の日常を取り戻した感じはする。また、意図して引いたんではないけどこれと同じなのが、#02「魅入られた少女(ストーカー)」#05「高い塔の女(万引きの弱みによる酷使労働)」。ターゲットによって自分の命が危ない状況になったらそりゃ引くしかないわな。突発的に引いたと言う点以外では上の部類に分類されるね。これらは自分のために引いた部類。
もう一つ大きな分類として、他人のために引く復讐を主な目的とした部類。#03「汚れたマウンド(暴行のため死んだチームメイトのため)」#04「聞こえぬ叫び声(いいかげんな治療のため死んだ愛犬のため)」#11「ちぎれた糸(捏造記事で社会的打撃を受けた家族のため)」」#14「袋小路の向こう(自殺に追い込まされた父親のため)」#15「島の女(ターゲットに殺された母親のため)」なんかがコレに当たる。#15は序盤では自分のためだったけど、状況は一変して・・・あとは実際見てください。これらでは復讐が遂げられて依頼者は目的を果たして納得してるんだけど、中盤の話である#14ではそれだけじゃない影響も描かれてる。個人的には恨んでる人だけど、社会的には多くの人を支えてる人がターゲットになった場合の回、それが#14。
あとはこれから外れる話という分類。#07「ひびわれた仮面(依頼者が流される)」#10「トモダチ(友情のすれ違い)」#12「零れたカケラ達(ターゲットが依頼者に地獄送りを依頼)」#13「煉獄少女(地獄少女と契約した者の結論)」#17「硝子ノ風景(・・・)」#20「地獄少女 対 地獄少年(・・・)」とかかな。最後二つは依頼者中心の話じゃなくて、「地獄少女」のスペックを示す回だった気がする。まぁ依頼者が人間の能力を超越してるしなw。
あと#08「静寂の交わり」ってどんな話だったか覚えてないw。柴田親子登場の回っていう印象しかない。
だいたいこれで全部かな。#18、#19については後述。


もうそろそろ話も終幕なんですが、16話からの流れは全て新しいパターンで見ごたえがある。#16「旅芸人の夜」ではターゲットをギリギリまで勘違いさせてくれたし、#17「硝子ノ風景」はあんなだしw、#18、#19は後述するけど、#20「地獄少女 対 地獄少年」はどこまでが本当なのか分からないし、しかも地獄少女ボンボン叩きつけられて仕舞にはゴスロリ衣装にコスプレさせられてるしw、そして今回の#21でついに糸を引かないという一線を超えた。



そろそろ#18と#19の話をば。
#18「縛られた少女」は愛犬2匹を人質にとられて、喋ったら殺すと言われて言うことを聞くんだけど、結局1匹殺され、2匹目が子どもを生んだんだけど、その2匹目も殺され、最後にはその子どもも全部殺される。1匹目が殺された時、藁人形は手の中にあったんだけど、結局引けず、ターゲットに全部殺されるという最悪の結末。そして放心状態で糸を引く。最悪のタイミングで糸を引く。もっと早ければ守れたかもしれないのに、決断力のなさのせいで全てを失い、引かない決断ならそれもいいと思うのに、全てをなくして復讐のためだけに糸を引く。本当に居た堪れない話です。時間が経つ毎に、糸を引く目的が、「守るため」から「復讐」に話内で変わっていく、その辺りで重要で秀逸な回だと思った。
#19「花嫁人形」は名家の人形師の息子と結婚して嫁ぐんだけど、その姑が自分を人形としてしか見ておらず、外出も出来ない、ただそこにいればいい、人形のようにしてればいい、という状況に耐えられず、糸を引いてその姑を流す、という話。ここまでなら上の「自分のために引く部類」に入るんだろうけど、本編最後の1分でこの話は特殊な話に変わる。姑を流して夫と幸せな生活、と思っていたら、夫も姑と同じく自分を人形としてしか見ていなかった、そして生き地獄。糸を引いても幸せになれない状況もあることを示した点でこの回の持つ意味も大きい。



地獄少女が何者かまだ分からないし、なぜつぐみが地獄少女の視線が見えるのかもまだ全然解明されてない。残り5話で解明させることを期待しつつここらへんで筆を止めることにしよう。